第2回 「創意に生きる~中京財界史~」
著者 城山三郎
発行所 文藝春秋
明治維新以後の日本の近代国家への歩みを中京財界という名古屋を中心とする経済人の考え方や動きをドキュメンタリータッチで描く。時代は明治初年から昭和10年代前半トヨタ自動車誕生までの中京経済界の歴史。
「創意の人」の企業活動、企業の離合集散の歴史を辿ったユニークな財界史である。この作品は1955年に杉浦英一という城山氏の本名で中部経済新聞に半年わたり連載されたもの。氏は当時愛知学芸大学(現愛知教育大)で景気論を講義していた気鋭の学者。連載終了後、同社から「中京財界史」として発行されたものを1994年に「創意に生きる」をメインタイトルに中京財界史をサブタイトルとして(株)文藝春秋から文春文庫として改題発行された。氏が「総会屋錦城」で直木賞を受賞し、経済小説での第一人者、気骨の作家として高い評価を受けている時に再出版された。
標題の「創意の人」の代表は豊田佐吉とその息子の豊田喜一郎。両手両足を使って朝から晩まで機を織る母の苦労を見、せめて片手、片足でも楽にしてあげられないかと研究に没頭する佐吉。資本家の論理に翻弄され、二度まで挫折しながら不屈の努力で豊田式自動織布工場を立ち上げる。これが後年の豊田系全事業の基礎となる。その父の苦労を間近で見ていた喜一郎が国産乗用車を作ろうと豊田自動織機自動車部を立ち上げる。彼は自動車製造が基幹産業になると確信し、周囲の反対を押し切り社運を賭けて乗用車生産に没頭する。
これが世界のトヨタ自動車となる。名古屋、中京は元もと保守的な土地柄、経済界も堅実な手法でそれぞれ家業を発展させ、日本のものづくり産業の中枢を担っている。が、城山氏の興味は時代を先取りする「創意の人」にあった。本書は財界史であるが人物史としても興味深い。
第1回 「心に響く小さな5つの物語」
著者 藤尾秀昭
画 片岡鶴太郎
発行所 致知出版社
価格 952円
「僕の夢は一流のプロ野球選手になることです。そのためには中学、高校と全国大会に出て活躍しなければなりません。(中略)三年生の時から今までは365日中300日は激しい練習をやっています。だから、1週間で友達と遊べる時間は5,6時間です。(後略)」
これは42歳でなお大リーグで活躍しているイチロー選手の子どもの時の作文。
彼の資質は特別ですが、特筆すべきは目的意識の強さと目的実現の為の犠牲を厭わない意志の強さです。
夢に向かう自分に迷いが有りませんし、夢に対して代償を払う事を覚悟している潔さがあります。
彼には孤高、マイペース、取っつき難い、義理に流されない等のマイナスの評価も有りますが彼にとってそれも夢実現の為の代償かもしれません。
イチロー選手の話をやや詳しく説明しましたが、本書には後4つの話が載っています。心に残る話ばかりです。15分で読めます。一読すると何かしら新しい感情が湧き出ます。